もし、あなただったら、、、
ナカムラユキ

ある日のことです。

友人から渡された一枚のちらしを見て、愕然としたことがあります。
そこには、私が描いたイラストをそのまま模写したとしか思えない絵がありました。
他の人には、間違いなく私が描いたものと見えるでしょう。しかし、模写することによってゆがんだ線、色、背景の入れ替え・・・、それはもとの絵を描いた本人が見るには耐えられないものでした。

何百万枚と刷られ全国に配布されるちらしは、様々な人の目に触れます。 
私が日頃お世話になっている方達の目にも触れていることでしょう。
いったいこの絵を描いた人は、どんな気持で描いたんだろう? この絵を無断で使った会社は?

身近な例えですが、もし仮に、一人の会社員が毎晩残業を重ねようやく作りあげた大事な書類が、知らない間に他の社員に盗用され、それが発表されたとしたら、、、どうでしょう?
被害に遭ったその人は、やり場のない思いに悶々とするのではないでしょうか。

イラストを描くということは、ただ紙の上にペンをはしらせ、色を塗って出来上がっているものではありません。
一枚を描くには『アイデア』が必要です。何を描くかが大事なのです。
日々色々な刺激を受け、熟成させ、想像力をふくらませ、そしてようやく紙に向い、絵となっていくのです。

その時間をとてもとても大切にしているのです。見てくれる人に夢を与えたいと想って描いています。
一人でも笑顔になってくれたらいいな、、、っと思っています。
暗い出来事が多い世の中に、自分の出来ることで役に立ちたいと考えているのです。 

無断で使用するということは、ただ単に一枚の絵を盗んだだけでなく、そのアイデアやそれを生み出すまでの膨大な時間までも盗んだということになります。
私たちイラストレーターは、イラストを描くことで生活をしているのです。
社会の理解がより一層高まり、一人でも多くの方にご理解いただければと思います。


ナカムラユキ

イラストレーター暦26年。
博多生まれ、京都育ち。京都『宇野アトリエ』宇野氏のもとで5才の頃より絵画を学ぶ。証券会社勤務後、87年キャラクターコンペティション入賞を機に、フリーのイラストレーターとして独立。雑誌、広告のイラストレーションを中心にキャラクターデザイン、オリジナル商品企画制作、手作り雑貨制作等で活動。97年代官山を拠点にスタジオトリコロールを立ち上げ、商品企画やショップの雑貨コーディネーターとしても活動分野を広げる。
東京での12年間の活動を経て、2000年春より 京都にアトリエを移転し、活動中。2002年3月北白川に、パリで買い付けてきたフレンチ雑貨、オリジナル雑貨、ステーショナリー、プチカフェ&ギャラリーの『trico+』ショップオープン。
イラストレーションスクール「パレット・クラブ」イラストBコース講師。主な著書に「京都レトロ散歩」(PHPエディターズグループ)「京都さくら探訪」(文藝春秋)「365日雑貨暦」「京都に暮らす雑貨暦」「京都文具探訪」(アノニマ・スタジオ刊)「パリ雑貨日記」「ピエニトット」(mille books刊)「雑貨屋レシピ」(主婦の友社刊)他。2003年より主に 書籍を中心とし、イラスト・コラージュ・エッセイ・写真による表現で綴っている。
2012年9月、イメージプロセッシングの奥田正広とプティ・タ・プティ株式会社を設立。取締役専務。


ナカムラユキ公式ホームページ
http://petit-a-petit.jp





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