<須坂市によるアートバンクイラストの無断使用に関する一連の報道について>

平成30年6月、株式会社アートバンク(以下「アートバンク社」)のイラストを須坂市が無断使用した件について、須坂市長三木正夫氏のフェイスブックページその他SNSにおいて本件が公表されたことに端を発し、地元テレビ局、新聞報道によりそれが広く周知されることとなりました。
ただ、侵害者である須坂市側の情報のみでは本件の本質を捉えるのは困難です。
ここに、議会や報道記事で触れられていない事実について公表いたします。


●本件に関する須坂市の公開情報

https://www.city.suzaka.nagano.jp/contents/head/bn.php?mode=bn&id=1023


●本件に関する各所報道内容

信濃毎日新聞2018年6月16日付ウェブニュース
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180616/KT180615FTI090026000.php
abn長野朝日放送「abnSTATION」2018年6月14日放送
http://www.abn-tv.co.jp/news-abn/?detail=00026643


●本件の概要

須坂市が、須坂市主催のイベント(後援に信濃毎日新聞社及びabn長野朝日放送他複数団体)の広報物に、3年間に亘ってアートバンク社のイラストを無許諾で改変のうえ使用。また、某財団より助成を受け、須坂市他周辺自治体及び医療団体を構成員とする協議会が発行したパンフレットにイラストを使用。


●須坂市による情報公開を受けて

当初須坂市からアートバンク社への報告では、「インターネット上の検索サイトにおいて無料のイラストを検索して使用」「ヤフーで無料のイラストを検索して使用」とのことでしたが、当該イラストが無料のサイトに掲載されており、須坂市がそこからイラストを入手したという事実はありません。
当該イラストは通常の画像検索結果として表示され、須坂市はそこから出典を確認することなく使用に及んでおります。
パンフレットには、アートバンク社と同業の写真エージェンシーの透かし入りのイラストも使用されており、さらには、表紙イラスト他、パンフレットにて使用されているアートバンク社以外のイラストにも、有料イラストが多数ありました。


須坂市制作のパンフレット
「pixta.jp」の透かし入りイラスト
「sample」の透かし入りイラスト

これらの事実から、下記の内容を含む須坂市によって公表された情報は不正確であり、虚偽が含まれると判断せざるを得ません。


2018年6月14日に放送された「abnSTATION」のインタビューに対し、須坂市健康づくり課長は、「イラスト等は無料のものを使うようにとか、写真使うときは必ず確認をして使うようにとは話していた」が、「確認不足だった」と答えています。
しかしながら、アートバンク社で確認したところ、当該イラストは検索エンジン「Yahoo!」の画像検索結果から取得されていたものであり、出典はアートバンク社の当該イラストが掲載されているページとなっております。


チラシのPDFデータより

アートバンク社のページには、無断転載を禁ずる表記、料金表へのリンク等があり、通常の注意をもってすれば、無許諾かつ無償で利用できるものではないことは理解できます。
http://www.artbank.co.jp/stockillust/image_html/miraikobo/1-B-AMG869.html
そもそも確認作業すら行っていないものを、「確認不足」とは言えません。
先に述べた、透かし入りのイラストや有料イラストが須坂市のパンフレットに多数あった事実からも、市が日頃から著作権の帰属についての確認作業を行っていなかったことは明らかです。
さらに、本件はイラストに文字を重ねて加工した上で使用されており、同一性保持権の侵害という問題も孕んでいます。


また、イラストは無料のものを使用し、写真は確認を取っているとの須坂市の説明についても疑問が残るところです。イラストも写真も著作物であり、権利者の確認が必要であることに変わりはありません。
須坂市からは、本件を受け専門家を招いて研修を行ったと発表がありましたが、この発言が研修後のものであれば、再発防止が約束されたとは言えません。


尚、議会報告では他の自治体での同様事例についても紹介がありますが、例えば2012年に長野県庁(三木市長が過去在籍)が、きのこ写真の無断転載により賠償命令を受けております。個人のライターが撮影し、自身のホームページで公開していた写真を、長野県が無断で使用した事案です。


●最後に

自治体によるイラストの無断使用に関する議会報告は、そのほとんどが「無料」「イラスト」で検索したというものです。
ただ、それが事実であるかは明らかでなく、また、本当に無料のイラストであるかどうかの確認作業も行っておらず、「無料」と判断した根拠すらも不明なままです。そもそも指導自体が、「無料の素材を使用するように」だけというのも問題です。「無料素材」は、無許諾で、改変すらも自由に利用できる素材を指す言葉ではありません。
昨今のゆるキャラブームにより、自治体も個別のマスコットキャラクターを所有する時代となりました。当然のことながら、その利用料は発生しませんが(いわゆる無料素材)、各自治体は、利用にあたって申請書の提出を義務付けています(※)。
一部の問題が大きく取り沙汰されることにより、多くの自治体が著作権の処理を疎かにしているような印象を受けますが、ほとんどの自治体は、著作権法を遵守し適切に著作物を利用しています。


世間に公表されている著作物には、必ず作り手が存在します。
「無料だと思った」は、自己の責任を軽減する免罪符ではありません。
「他人のものは勝手に使わない」。それほど難しいことでしょうか。


http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20140515-OYS1T50009.html

「YOMIURI ONLINE」2014年5月15日記事へアクセスします





facebook上での須坂市市長三木正夫氏とアートバンク代表來田淳との遣り取り
(2018年6月14日〜16日)



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